2014年1月4日土曜日

故宮博物院の水墨画・書コレクション


故宮博物院の水墨画・書のコレクションは、2階に展示されている。陶磁器や玉器に比べて、展示スペースは少し狭い。

褚遂良の黄絹本蘭亭。有名な王羲之の蘭亭序を写したもの。

褚遂良は、唐の時代の政治家。唐の大宗に仕え、王羲之の書の管理、鑑定に携わっていたという。

その褚遂良による王羲之の模写は、おそらく最も忠実な模写の一つだろう。周りの字に比べ、やや大きく書かれた”観宇宙之大府”という字に、王羲之の晴れ晴れとした気分が、よく表れている。

蘭亭序のオリジナルは、唐の大宗が自分の陵墓にいっしょに埋めてしまい、今日では見ることができない。大宗は、この褚遂良の書を見て満足し、後世に残すのは、この写しだけで十分だと、自分に言い聞かせたのかもしれない。

褚遂良は、息子の高宗の時代になり、その后に武則天(則天武后)を立てることに反対し、今のヴェトナムの地に左遷され、その地で死んだ。

中国の書の多くは、実際に世の中を動かしていた政治家たちによって書かれたものが多い。その文字の一つ一つには、日本の能書家の文字にはない、特別な緊張感を感じる。

宋の皇帝、徽宗による、独特な細い字で書かれた書詩。

宋は、徽宗の時代、遼や金といった北方の騎馬民族に悩まされていた。自らの決断の甘さもあり、息子の皇帝、欽帝とともに、金の捕虜となり、その地で亡くなった。

その反面で、書画に優れ、多くの名品を後世に残している。この書もそのひとつだが、その極端なまでに細い書は、まるで、本人の性格を象徴しているようだ。

この人物は、その生きた時代の皇帝としては、およそ不適格な人物であった。自分でも、政治のことは側近に任せ、自分は、書画の世界に行きたかったに違いない。

どうも、いろいろなことを考えてしまい、なかなか次の作品に進めない。

水墨画のコーナーへ。

水墨画の最高傑作と言われる、范寛の谿山行旅。鑑賞するのを楽しみにしていたが、残念ながら、展示されていなかった。

范寛と同じ宋の時代の水墨画、郭煕の早春図。およそ1,000年前の作品とあって、全体的に黒ずんでしまっている。そのせいか、早春という感じはしない。しかし、絵の前に立つと、何とも表現できない、迫力というか、気のようなものを感じる。

画面の一番下の水辺に、小さな人影が見える。その上には、山々が靄をたたたえながら、そびえ立っている。画面のちょうど真ん中の辺りに、宮殿のような建物が見える。そして、画面のてっぺんにある山の頂き。

画面の下から、上にかけて、人間の進化の様子を描いているようにも、道教の世界の、仙人への修行の道を描いているようにも見える。

金の時代、武元直の赤壁図。三国志で有名な赤壁を描いている。川面から、絶壁がそそり立っているが、実際の赤壁はこのようになっていない。ここに描かれているのは、現実の赤壁ではない。人々のイメージの中の赤壁だ。

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